漫ろ歩き

小説のようなものを書きます

修理の日です

 

 朝、いつもより早めの時間に目が覚める。太陽も私もまだ眠気眼で、部屋は薄暗い。カーテンを開けても開けなくても同じだろうと安易に想像出来た。手を伸ばし、スマホで時間を確認する。5時23分。尋常じゃない程の睡魔に襲われているのも納得の時間だ。そもそも私は夜型なのだ。昨晩も殆ど今日と言っていい時間にスマホをいじりながら気を失うようにして寝た筈であり、2時間も寝られていれば良い方だ。

 大きな欠伸をひとつしてから、ハッとして隣で規則正しい寝息を立てている彼を盗み見た。私の心配をよそに、彼は咀嚼するように口を動かしつつ、枕の位置の収まりを気にする素振りを見せると再び深い眠りに入ったようだった。眠りの浅い私とは対照的に、彼は一度眠るときっちり8時間は寝る体質だ。以前、ついつい羨ましいと口にしてしまった時は「その分燃費悪いから」と力の抜けた顔で笑っていた。

 今日は火曜日、燃えるゴミの回収日だ。昨日のうちにゴミは玄関へ纏めておいたし、ゴミステーションも幸いな事に部屋から近い。なんだか何もかもが上手く行き過ぎていて、私は手持ち無沙汰だった。せっせと用意した豪華なディナーを前にテーブルへついた途端、然程空腹でないと気が付いたかのような、そんな胃の重くなる気分だった。他にする事も無ければしようとも思わず、ただボンヤリとベッドに座っている。

 

 何となしに部屋を眺めていると正面に夏の間に壊れてそのまま放置していたエアコンを捉えた。ああそうだった、あれは一度修理に出さなければ。そういえば風呂の湯を抜いていなかった筈だ。洗濯物も1回分相当は溜まっている。シンク、は片した筈だ。途端に今日1日の予定が埋まっていき、私は布団を隣の彼に掛け直すとしっかりとした足取りで立ち上がる。まずは洗濯機を回してしまおう。それから、それから。彼の身動いだ音が、私のスリッパを履いた音で掻き消された。